日経新聞 春秋 2018.02.07

 ビットコインの考え方が世にお目見えしたのは2008年のことだったらしい。
サトシ・ナカモトと名のる人物が、この電子通貨の基礎となる論文をネット空間で発表したのである。
日本人っぽい名前だが、本当のところ誰なのか、一人なのか複数なのかもなお不明だ。
08年といえばリーマン・ショックの年。米国を震源地とするグローバルな金融危機は、ながく基軸通貨の座にある米ドルへの信認をそこなった面もあった。
大変な量の計算で「採掘」され、発行量に絶対的な上限があるという仮想通貨ビットコインは、そんなとき産声をあげたわけだ。
偶然ではなかったようにもみえる。 (上限2.100万枚)
大恐慌以来」ともいわれたリーマン・ショックだが、実体経済への影響は大恐慌ほど深刻にはならず済んだ。
最大の原因は、米連邦準備委員会(FRB)はじめ主だった国お中央銀行が「異次元」の金融緩和を推し進めたことだろう。
世界不況をさけるには適切だったが、ビットコインにとって良かったか悪かったか。
ドルやユーロ。円が空前の勢いで市中に供給されるなか、ビットコインは通貨としてよりも投機の対象として普及してきた印象がある。
あげくが昨年の暴騰と今年初めからの暴落といえまいか。
そして足元では株式相場が激しい変動を演じている。リーマン・ショックからやがて10年。金融の世界は相変わらず不安定だ。