日経新聞 春秋 2017.11.26

 大阪での勤務時代、会社近くの立ち飲みの店によく通った。
元は酒の小売をしていたふうの空間である。いつしかミニ居酒屋と化したふうの空間である。
手作りのつまみは値段別に棚に置かれ、飲み物も含めて客が自ら運び、伝票に「正」の字を書きこんでいく。セルフ形式だった。
フロアは省力化され、客も1時間を超える滞在はまれ。阪神タイガースやB級グルメなど話題も当り障りない。「あきんどの街やら、パッと入ってサッと飲んで出るんや」。そんなもっともらしい説も小耳にはさんだ。何事も倹約を旨とする心が息づいているようである。
だらだら飲むのは時間の無駄、というわけだ。
伊藤忠商事は約4年前から「110運動」を推進する。社内の飲み会ルールだ。1次会だけ、夜10時終了の意味らしい。範にしたのは韓国サムスン電子の「119指針」。
こちらは1次会、酒は1種類、夜9時終了と、さらに厳しい。どちらも大阪流とは相性が良さそうで、以外に時代を先取りしていたのかもしれない。
最近はオフィスでも立って仕事をするスタイルが広まりつつあるという。会議は短縮され、生産性向上にも資する。肥満など座りすぎのリスクも低減できると、
いいことづくめなのだそうだ。「みこしを据える」のは酒席でも仕事でも敬遠されだしたようである。
もう直ぐ師走。いっそ忘年会は立ち飲みの店でしませんか。