解説 記念碑的な「漂流教室」 東京女子大学教授 副田義也(そえだよしや) 1975年5月

この「漂流教室」と言う作品は、楳図かずお氏にとって、これまでの制作活動によって得たきたものの集大成であると同時に、これからの制作活動のために、新しい数々の曲面をひらいた記念碑的な作品だと思います。
ここには、これまでの、この作家のすべてがあり、さらに、これからのかれの多くが予告されています。
主題について言えば、楳図氏のいわば譜代の主題は、人間の憎しみや恨みであり、それらに基づく迫害や殺傷であり、また、それらがもたらすおびえ、悲しみ、孤独などでありました。
子供たちは大人たちが想像するより、はるかに、しばしば、しかも深く、それらの感情や衝動を味わっています。
楳図氏は、多くの怪奇もの、恐怖ものでそれらを的確に描き、年少の読者たちを、いやおうなく惹きつけまた。
そんな真面目は『漂流教室』でも良く発揮されています。
遠い未来に投げ出されて子供達のおびえや悲しみかれらの間の憎しみ、恐ろしいグロテスクな未来動物もつぎつぎに登場します。
しかしこれまでの楳図氏の作品では十分に展開されなかった主題も『漂流教室』では多く、正面きってとりあげられています。
続く・・・
漂流教室